(法人成り)法人設立後に必要な税務の届出
個人事業主が法人成りをして法人を設立した場合に、法人及び個人で提出が必要な税務関係の届出をまとめています。
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1.法人設立後の税務署等への届出
(1)法人設立届出書
(2)青色申告の承認申請書
(3)給与支払事務所等の開設届出書
(4)源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
(5)消費税課税事業者選択届出書
(6)消費税の新設法人に該当する旨の届出書
(7)インボイス登録申請書
(8)棚卸資産の評価方法の届出書
(9)減価償却資産の償却方法の届出書
2.個人事業の廃業関係の届出
(1)個人事業の開廃業届
(2)所得税の青色申告の取りやめ届出書
(3)給与支払事務所等の廃止届
(4)消費税の事業廃止届出書
1.法人の税務署等への届出
法人の届出で主に必要なものは、次の9つとなります。
(1)法人設立届出書
法人設立届出書は、税務署、県税事務所、市町村にそれぞれ提出します。
提出先 | 提出期限 | 添付書類 |
税務署 | 法人設立後2か月以内 | 定款の写し |
県税事務所 | 法人設立後1か月以内(※) | 定款の写し 登記事項証明書の写し |
市町村 | 法人設立後1か月以内(※) | 定款の写し 登記事項証明書の写し |
※ 県税事務所と市町村の提出期限は、自治体によって異なるため、提出先ごとの期限を確認してください。
(2)青色申告の承認申請書
青色申告の届出期限は、「設立の日以後3か月を経過した日」と「設立第1期の事業年度終了の日」のいずれか早い日の前日までとなります。
青色申告には主に次の特典があります。メリットが大きいので、基本的に提出します。
特典 | 内容 |
欠損金の10年間の繰越控除 | 赤字を翌年度以降の黒字から、最大10年間にわたり相殺できる |
欠損金の繰戻しによる法人税額の還付 | 中小企業などは、当期の赤字を前期の黒字と相殺し、法人税の還付を請求できる |
少額減価償却資産の損金算入 | 中小企業などは、30万円未満の減価償却資産を一括で経費にできる (年間300万円が上限) |
中小企業投資促進税制 | 中小企業などは、一定の機械等を取得した場合に、特別償却や税額控除を受けられる |
(3)給与支払事務所等の開設届出書
従業員に給与を支払う場合や、法人成りにより経営者に役員報酬を支払う場合には、給与の支払事務所を開設後1か月以内に「給与支払事務所等の開設届出書」を税務署に提出します。
(4)源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
給与から天引きした源泉所得税は、原則として、支給した月の翌月10日までに税務署に納付します。
4月に支払った給与の源泉所得税であれば、5月10日までに納付する必要があります。
給与の支給人数が常時10人未満であれば、特例の承認を受けることで、年2回(7月と1月)の納付にできます。
<納期の特例の場合の納期限>
源泉徴収をした月 | 納期限 |
1月から6月まで | 7月10日 |
7月から12月まで | 翌年1月20日 |
納期の特例の適用を受けたい場合は、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出します。
申請書を提出した月の翌月末日までに、税務署長から却下の通知がなければ承認となり、申請書の提出日の翌月に支払う給与から適用されます。
(5)消費税課税事業者選択届出書
設立1年目の消費税の支払いが多く、消費税の還付を受けたい場合には、設立初年度中に「消費税課税事業者選択届出書」を税務署に提出します。消費税の課税事業者となることで、消費税の還付を受けることができます。
消費税の還付を受けられるケースには、次のような場合が考えられます。
- 個人事業で使用していた固定資産や棚卸資産の買取りがある
- 多額の設備投資がある
デメリットとして、原則2年間は強制的に課税事業者となることがあります。
複数年のシミュレーションをした上で、課税事業者を選択するかどうかを判断するとよいでしょう。
(6)消費税の新設法人に該当する旨の届出書
基準期間がない事業年度の開始日の資本金が1,000万円以上の場合は、新設法人に該当し、消費税の納税義務があるため、「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」を速やかに税務署へ提出します。
なお、法人設立届出書の「消費税の新設法人に該当することとなった事業年度開始の日」欄に設立年月日を記入した場合には、「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」を提出する必要はありません。
(7)インボイス登録申請書
会社設立年度からインボイスを発行したい場合は、「登録申請書」を設立事業年度中に税務署に提出する必要があります。
経過措置により、令和11年9月30日までの日の属する課税期間まで、「課税事業者選択届出書」の提出は不要です。
(8)棚卸資産の評価方法の届出書
棚卸資産の評価方法を選択したい場合、設立第1期の確定申告書の提出期限までに提出します。
提出しない場合は「最終仕入原価法」による評価となります。
(9)減価償却資産の償却方法の届出書
減価償却資産の償却方法を選択したい場合、設立第1期の確定申告書の提出期限までに提出します。
提出しない場合は、建物、建物附属設備、構築物は「定額法」、それ以外は「定率法」による償却となります。
2.個人事業の廃業関係の届出
個人事業を廃業する場合の届出は、次の4つがあります。
(1)個人事業の開廃業届
法人に個人事業の全部を引き継いで、個人事業を完全に廃止する場合、事業廃止から1か月以内に税務署へ提出します。
個人事業で一部の事業を継続する場合や、法人に個人の不動産を賃貸して不動産所得が発生するような場合は提出しません。
(2)所得税の青色申告の取りやめ届出書
個人事業を完全に廃止する場合は、「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を、青色申告をやめようとする年の翌年3月15日までに税務署に提出します。
(3)給与支払事務所等の廃止届
従業員への給与の支払いがなくなる場合は、「給与支払事務所等の廃止届」を廃止から1か月以内に税務署へ提出します。
(4)消費税の事業廃止届出書
消費税の課税事業者だった場合には、事業廃止後速やかに「事業廃止届出書」を税務署に提出します。