宿日直手当の非課税規定の使いどころ
宿日直料のうち4,000円までを非課税とする所得税の取扱いがあります。宿日直には労働基準法の許可基準もあり、併せて考える必要があります。それぞれの取扱いと使いどころについてまとめています。
1.宿日直とは
宿日直は、所定労働時間外や休日に、見回り、文書や電話の収受、非常時に備えて待機するもので、ほとんど労働する必要のない勤務のことを言います。深夜に勤務する点では夜間に労働する「夜勤」と似ていますが、宿直は労働を前提としていないので、異なる勤務内容となります。まず所得税の宿日直料の取扱いを確認します。
(1)宿日直料の非課税
- 原則は給与扱い、1回の宿日直料で4,000円までの部分は非課税
- 食事代や洗面具代などの実費を弁償する性格を考慮して、非課税とする取扱い
- ほとんど労働する必要のない勤務を想定しており、労働基準法上の宿日直と一緒の内容ではない
(2)課税される場合
次の場合の宿日直料は非課税の対象とならず、通常通り課税されます。
- 宿日直を本来の職務としている人
- 宿直または日直をすると代休が与えられる人
- 宿日直料が給与に比例した金額で支給される人
(3)その他の場合
①宿日直勤務の間に通常業務を行った場合
通常勤務の部分は、労働基準法により時間外手当の支給が必要となります。この時間外手当については、通常通り、給与として課税します。
②食事が無料で支給される場合
食事の価額を4,000円から控除した残額を非課税とします。たとえば、1回につき3,500円の宿直料と700円相当の食事が支給される場合には、
- 課税される金額 3,500円-(4,000円ー700円)=200円
- 非課税となる金額 3,500円ー200円=3,300円
となり、200円に課税し、3,300円は非課税となります。また、宿日直で支給される食事も非課税です。
2.労働基準法の宿日直とは
労働基準法の宿日直の取扱いは、労基署の許可を受ければ、労働基準法の労働時間、休憩及び休日の規定が適用されずに勤務させることができます。次のような許可基準とされています。
- ほとんど労働をする必要がない勤務で、見回り、緊急の文書や電話の収受、非常時に備えての待機を目的とするもの
- 通常の労働の継続は許可されない
- 医師、看護師、福祉施設の場合、一般の宿直業務に加えて、軽度で短時間の業務への従事に限る
- 宿日直手当として同種の労働者に支払う賃金の1人1日平均額の1/3以上を支給
- 宿直業務は週1回、日直業務は月1回が限度
- 仮眠が取れる睡眠設備が必要
介護施設で利用できないかと考えたのですが、具体的な内容となっており、24時間サービス対応施設で許可を得るのは難しそうですね。
社会福祉施設の場合
通常の勤務時間の拘束から完全に解放されたものであり、夜間に従事する業務は、一般の宿直業務のほかには、少数の入所児・者に対して行う夜尿起こし、おむつの取替え、検温等の介助作業であって、軽度(※1) かつ短時間(※2) の作業に限ります。夜間における児童の生活指導、起床後の着衣指導等通常の労働と同態様の業務は含まれません。
※1「軽度」とは、おむつ取替え、夜尿起こしであっても要介護者を抱きかかえる等身体に負担がかかる場合は含まれません。
出典 厚生労働省 労働基準法の宿日直許可のポイント
※2「短時間」とは、介助作業が一勤務中に1回ないし2回含まれていることを限度として、1回の所要時間が通常10分程度のものをいいます。
3.おわりに
所得税の取扱いに比べて、労基署の許可基準は具体的な内容となっており、使える場面が限定されそうです。事業者ごとに実際の状況を当てはめて、適用できるかどうかを検討していくことになります。